2015-01-01から1年間の記事一覧
この記事は 学生エンジニア Advent Calendar 11日目の記事です。 会話をしていると、会話者同士が同時に話してしまうこと、あったりしますよね。これを言語学的にはオーバーラップといいます。オーバーラップが起きたとき、誰が続けて話すか、という問題が瞬…
この記事は 学生エンジニア Advent Calendar 10日目の記事です。 前回の記事で、男性優位の社会によって、性差の違いによる言葉の運用のされ方が異なってくる、といったことを書きました。今回は日本の場合、具体的にどんな性差別の違いをみていこうと思いま…
この記事は 学生エンジニア Advent Calendar 9日目の記事です。 日本でも、性差によって話し方や使う単語が違っていたりします。例えば、男性は傾向として「はらへった」、女性は「お腹すいた」なんて言ったりしますよね。どうしてこのような言葉の運用に性…
発話の重複(overlap)とは、1人の話者が話している最中に、別の人が話し始め、発話が重複する現象のことを指す。ディスカッションなどの決められたテンプレートのもとで運用される会話などとは違い、特に自然会話などの特に話し方や順序が決められていなく…
会話を分析すると「遮り行為」が節々でみられる。 この「遮り行為」とは一体なんなのか。これは1人の話者のターン時に、無理矢理別の人が発話を始めることであり、前者の発話権を奪ってしまう行為のことを指す。 遮り行為は、遮る人が発話が重なることを承知…
あいづち(back-channel)とは、聞き手が話し手に対して送る短いメッセージのことであり、話者交替とは見なされないものとする。 1960年代以降、心理学や社会学では、対面の対話における聞き手の応答の仕方や非言語的振る舞いがどのように会話に影響し、社会…
隣接ペアとは、対になった2つのターンから構成されるもので、発話のやりとりの分析の最小単位である。 例えば Aさん:こんにちは。 Bさん:やあ、こんにちは。 このようなやりとりを隣接ペアと呼ぶ。 会話分析(Conversation Analysis)の分野では、Sacksら…
コンピュータ・ネットワークはしばしば、書いたり、話したりして行なうコミュニケーション媒体とは性質が違う、という認識をされてきた。また、書いて(タイピングして)行なうコミュニケーションとしての研究よりも、CMD特有の電子媒体が持つ効果や影響につ…
Computer-mediated discourse(CMD) とは何か。チャットであれ、音声通信であれ、インターネットを通じて行なわれるコミュニケーション・会話を研究するに当たって、CMDは非常に重要な基礎概念である。 CMDとは、「インターネットを通じて人が相互にメッセー…
話者交替について分析する際に、floorという概念を用いることがある。しかしこのfloor、概念自体が少々難しくてすんなり理解するのが難しい。今回はきちんと概念を整理し、理解するためfloorについて詳しくみていく。 Sacksによるfloorの提唱 1972年、Sacks…
会話を分析していくとどのタイミングで話し手が変わっていているのかが確認できる。そのタイミングを決める要素として、どのような会話がなされているかという会話の中身に依っている場合もあるし、沈黙や言い切りといった、いわゆる「間」の存在であったり…
多言語政策が重要視されるようになったのはどのような経緯からなのか、19世紀の国家形成までさかのぼってみていく 近代国民国家イデオロギーのもと形成された国家 19世紀のヨーロッパで主に盛んだったのが近代国民国家イデオロギーに則った国家形成。これは…
多くの人が様々な理由で国と国を行き来するようになった現代において、国における多言語政策は日に日に重要になってきているように思える。ここでは「多言語政策」という言葉についてまとめる。 言語政策の定義 庄司(2013)によれば、言語政策とは国家あるい…
声門や声帯以外にも人は音声器官を有しています。今回は主に口と鼻の音声器官についてまとめます。 気流の通る道と咽頭腔 肺から出た気流は声門・喉頭蓋を通り、咽頭腔(いんとうがい: epiglottis)という筒上の空間を通り、鼻または口へと向かっていきます…
「ポライトネス」という言葉の誤解 ポライトネス(politeness)は翻訳すると「丁寧な、礼儀正しい」という意味になる。しかし言語学的にこの言葉を使う時はその意味以外のことも含むので単にポライトネスと表記することが多い。言語理論上のポライトネスは人の…
音声学(Phonetics)とは 言語音を物理的に分析していく学問。実はこの領域は言語学の領域ではなくて物理学のそれに当たる。 というわけで、言語音をどう整理し、分類していくかをみていくことにする。 人が音を出すために使っている器官 声を出すための器官を…
複数の言語が併存していて、ダイグロシアのように安定した言語環境であれば言語の衰退はあまり見られない。 しかし安定していない、つまり言語同士が同じ状況下で使われ競合した場合、一つの言語が広く使われるようになり、それ以外が衰退していく過程を辿る…
ダイグロシアとは日本語に訳すると「二言語変種使い分け」となる。 社会によっては二つの明らかに異なる言語が状況や場面に応じて使い分けられており、同時に存在する場合がある。 例えばシンガポールでは大学では英語が使い、家庭では北京語を使う人もいる…
談話分析をするのであれば「コミュニケーション」とは何かを明確にしておかなければならない。なぜなら談話分析とはコミュニケーションの一部を分析をする物であるため、非常に密接に関わってくるから正確な理解と扱いが必要なのだ。 コミュニケーションの要…
談話分析をする際に有効なツールとして、テクストとコンテクストがある。談話分析では実際の話された会話などをテクストとコンテクストというスタイルで保存し、分析を進めていくことが多い。以下ではその基礎となるテクストとは何か、コンテクストとは何か…
談話分析とは1つの文のみを対象にした分析(ことばの構造分析)を超え、文と文の関係性などを分析するので、言葉の構造・言葉の機能両方を知った上で談話分析を進めなければならない。 談話分析の手順 談話分析では分析する言葉(文)を - 言葉の構造の分析 -…
ことばを使ったコミュニケーションの働き、作用のことを指す。社会言語学の領域では非常に重要とされる考え方である。ことばの機能っていっても、具体的にどんな機能があるの?と疑問を持ち、機能を分解していった学者の一人にヤコブソンとハイムズがいる。 …
ことばの構造とは 言語学においてことばの構造とは、ことばの部分と部分の関係を指す。文を対象にするのであれば、文の中における句と句の関係を指し、句の構造と言えば、句の中の語と語の関係を指す。このようにことばを分解し、ことばの単位である句や語、…
言語変種からみる社会階層と地域性 言語における標準変種と非標準変種 - ことばの世界で把握したように、社会階層によって同じ英語でも使っている言葉の文法や発音、アクセントが異なることがあり、それを変種と呼ぶ。変種には標準変種と非標準変種に分ける…
言語には標準変種(standard variety)と非標準変種(non-standard variety)が存在する。特に非標準変種は土地言語(varnacular)とも呼ばれる。 これらの変種は、地域性のみでなく、社会階層によっても規定される。 標準変種を使う人たち 主に上流階級に属する…
多言語社会について考える際、思い浮かぶ国々はというとアメリカやフィリピン、ヨーロッパ(EU)あたりになるのではないだろうか。逆に非多言語社会といったときに思い浮かぶのは単一民族国家と一般的には認知されている日本になるのではないだろうか。しか…
同化政策とアイヌ語の衰退 1869年、大日本帝国は蝦夷地を北海道と改められ、和人が次々とその地に開拓を図るようになっていった。同時にアイヌ民族に対して狩猟/漁業の規制を設け、アイヌ民族の伝統的な暮らしを強制的に変えていくこととなる。和人は旧土人…
近代欧米文化を軸にした言語研究 この時代の言語研究の目的は文化の起源を探求することにあった。一般的には近代欧米文化が最も高次な領域にあり、地域の民族が持っている文化を低次と見なし、高次なものへと上げていくという文化進化論が幅を効かせていた。…
近年、日本でも「多言語社会」に関する意識が高まっている。なぜか?1980年以降、外国人が急激に増えたからだと推測することができる。しかし、これまで「多言語社会」について語る際、その言語の数や使われている言葉の数に注目しがちだった。もっと深く「…
「多言語社会日本 - その現状と課題 - 」を読んで、今後詳しく知りたくなった時のためにひとまとめ。 庄司博史(Hiroji Shoji) 執筆した内容:「多言語社会の捉え方 - いくつかの視点 - 」 現職:国立民族学博物館民族社会研究部教員 専門:言語学、言語政策…