ことばの世界

言語学を勉強してます

社会言語学

モバイル・チャットと対面会話でのターンテイキングとフロアの運用の違い

この記事は 学生エンジニア Advent Calendar 11日目の記事です。 会話をしていると、会話者同士が同時に話してしまうこと、あったりしますよね。これを言語学的にはオーバーラップといいます。オーバーラップが起きたとき、誰が続けて話すか、という問題が瞬…

日本語における男女別の単語・文法・発音の違い

この記事は 学生エンジニア Advent Calendar 10日目の記事です。 前回の記事で、男性優位の社会によって、性差の違いによる言葉の運用のされ方が異なってくる、といったことを書きました。今回は日本の場合、具体的にどんな性差別の違いをみていこうと思いま…

性差・階層別で比較してみるイングランド・ノリッチ地方における地域語の特徴からみえるもの

この記事は 学生エンジニア Advent Calendar 9日目の記事です。 日本でも、性差によって話し方や使う単語が違っていたりします。例えば、男性は傾向として「はらへった」、女性は「お腹すいた」なんて言ったりしますよね。どうしてこのような言葉の運用に性…

Overlapとは

発話の重複(overlap)とは、1人の話者が話している最中に、別の人が話し始め、発話が重複する現象のことを指す。ディスカッションなどの決められたテンプレートのもとで運用される会話などとは違い、特に自然会話などの特に話し方や順序が決められていなく…

遮り行為の分析

会話を分析すると「遮り行為」が節々でみられる。 この「遮り行為」とは一体なんなのか。これは1人の話者のターン時に、無理矢理別の人が発話を始めることであり、前者の発話権を奪ってしまう行為のことを指す。 遮り行為は、遮る人が発話が重なることを承知…

会話における、あいづちの役割

あいづち(back-channel)とは、聞き手が話し手に対して送る短いメッセージのことであり、話者交替とは見なされないものとする。 1960年代以降、心理学や社会学では、対面の対話における聞き手の応答の仕方や非言語的振る舞いがどのように会話に影響し、社会…

隣接ペアとは何か

隣接ペアとは、対になった2つのターンから構成されるもので、発話のやりとりの分析の最小単位である。 例えば Aさん:こんにちは。 Bさん:やあ、こんにちは。 このようなやりとりを隣接ペアと呼ぶ。 会話分析(Conversation Analysis)の分野では、Sacksら…

Computer-mediated discourse(CMD)の分類

コンピュータ・ネットワークはしばしば、書いたり、話したりして行なうコミュニケーション媒体とは性質が違う、という認識をされてきた。また、書いて(タイピングして)行なうコミュニケーションとしての研究よりも、CMD特有の電子媒体が持つ効果や影響につ…

Computer-mediated discourseとは、その歴史

Computer-mediated discourse(CMD) とは何か。チャットであれ、音声通信であれ、インターネットを通じて行なわれるコミュニケーション・会話を研究するに当たって、CMDは非常に重要な基礎概念である。 CMDとは、「インターネットを通じて人が相互にメッセー…

話者交替におけるフロア(floor)という概念

話者交替について分析する際に、floorという概念を用いることがある。しかしこのfloor、概念自体が少々難しくてすんなり理解するのが難しい。今回はきちんと概念を整理し、理解するためfloorについて詳しくみていく。 Sacksによるfloorの提唱 1972年、Sacks…

話者交替(turn-taking)とは

会話を分析していくとどのタイミングで話し手が変わっていているのかが確認できる。そのタイミングを決める要素として、どのような会話がなされているかという会話の中身に依っている場合もあるし、沈黙や言い切りといった、いわゆる「間」の存在であったり…

協調の原理・丁寧さの原理、ポライトネスの規則

「ポライトネス」という言葉の誤解 ポライトネス(politeness)は翻訳すると「丁寧な、礼儀正しい」という意味になる。しかし言語学的にこの言葉を使う時はその意味以外のことも含むので単にポライトネスと表記することが多い。言語理論上のポライトネスは人の…

言語の移行と衰退

複数の言語が併存していて、ダイグロシアのように安定した言語環境であれば言語の衰退はあまり見られない。 しかし安定していない、つまり言語同士が同じ状況下で使われ競合した場合、一つの言語が広く使われるようになり、それ以外が衰退していく過程を辿る…

ダイグロシア[diglossia]とは

ダイグロシアとは日本語に訳すると「二言語変種使い分け」となる。 社会によっては二つの明らかに異なる言語が状況や場面に応じて使い分けられており、同時に存在する場合がある。 例えばシンガポールでは大学では英語が使い、家庭では北京語を使う人もいる…

言語の持つ社会的評価の影響

言語変種からみる社会階層と地域性 言語における標準変種と非標準変種 - ことばの世界で把握したように、社会階層によって同じ英語でも使っている言葉の文法や発音、アクセントが異なることがあり、それを変種と呼ぶ。変種には標準変種と非標準変種に分ける…

言語における標準変種と非標準変種

言語には標準変種(standard variety)と非標準変種(non-standard variety)が存在する。特に非標準変種は土地言語(varnacular)とも呼ばれる。 これらの変種は、地域性のみでなく、社会階層によっても規定される。 標準変種を使う人たち 主に上流階級に属する…

19~20世紀前半までの言語研究

近代欧米文化を軸にした言語研究 この時代の言語研究の目的は文化の起源を探求することにあった。一般的には近代欧米文化が最も高次な領域にあり、地域の民族が持っている文化を低次と見なし、高次なものへと上げていくという文化進化論が幅を効かせていた。…

多言語社会のとらえかた

近年、日本でも「多言語社会」に関する意識が高まっている。なぜか?1980年以降、外国人が急激に増えたからだと推測することができる。しかし、これまで「多言語社会」について語る際、その言語の数や使われている言葉の数に注目しがちだった。もっと深く「…