ことばの世界

言語学を勉強してます

話者交替(turn-taking)とは

 会話を分析していくとどのタイミングで話し手が変わっていているのかが確認できる。そのタイミングを決める要素として、どのような会話がなされているかという会話の中身に依っている場合もあるし、沈黙や言い切りといった、いわゆる「間」の存在であったりもする。 今回は、この話者交替という、話し手が変わるための条件、というものを詳しくまとめていく。

会話が持つ話者を選択する力

会話には話者を選ぶ力、ルールが存在します。そのことを明らかにしたのがSchegloff(1968年)です。彼は電話のやりとりを分析していく上でこの力・ルールを発見するに至りました。会話の中には質疑応答のような召還-応答といった要素がペアになるやりとりが存在することに気づき、このやりとり(会話)が質問する人、それに答える人、というように話者を選んでいる、と考えました。このようなペアのことを隣接ペア(adjacency pair)と呼びます。

発話交替より生じる話者交替

 発話交替とは発話がどのタイミングで変わるか、ということです。話者とは「話し手」のことですね。では「発話」とはなんなのでしょうか。ググってみると

発話とは「音声言語を表出する行動(=発話行動)と、その結果生じた音声。現実的なできごととしての音声言語。」

というふうに定義されていました。よって、つまり発話行動が変わるタイミング・一連の流れを発話交替といいます。主に発話交替が行なわれるタイミングは3つあります。

  1. 現在の話し手が次の話し手を選択する場合
  2. 現在の話し手以外の会話者が自主的に話し手になる場合
  3. 他の会話話者が誰も発話しないので、現在の話し手が話を続ける場合

この3つのリストのうち、①と②が話者交替に区分されます。③は話し手は現行のまま変わらないので話者交替にはなりません。 以上のことをまとめたのがSacks, Schegloff, Jefferson(1974年)です。上記3つのリストより、発話交替は無秩序に行なわれるものではなくて、社会的な原則が存在することが明らかになりました。

発話の節目はどこ?

発話1つ1つの節目を予想しながらぼくらは会話を遂行しているように思えます。ではどのように発話の節目を予想しているのでしょうか?日頃意識しないことなので具体的に調べていくのはすごく難しいように思えます。現在に至るまでに、以下のことがわかっています。

  • TRP(Transition Relevance Place: 移行関連場所)とよばれる、発話が終わるタイミングがあると話者も変わりうる。TRPには主に話の終わり・沈黙・下降調のイントネーションなどが挙げられます。TRPはまた別の機能として発話重複(overrap)を防ぐ機能も持っています。
  • TRPの結果として、発話が個々を分解することができる、と見なされました。そうすると発話における言語的単位(turn component)が発生します。このturn componentの1つとしてTCU(Turn-Construction-Unit: ターン構成単位)があります。TCUはTRPによって決定されるものであり、文や節の場合もあれば、句や語からも構成される場合もあり、言語によってもそれは変化する。

以上より、会話の中でどのようなルールのもと話者が変わるか、何がきっかけとなって話者が変わりうるのか、といった点を明確にできたかと思います。