ことばの世界

言語学を勉強してます

日本語における男女別の単語・文法・発音の違い

この記事は 学生エンジニア Advent Calendar 10日目の記事です。

 前回の記事で、男性優位の社会によって、性差の違いによる言葉の運用のされ方が異なってくる、といったことを書きました。今回は日本の場合、具体的にどんな性差別の違いをみていこうと思います。文法・単語・発音の順にみていきましょう。

文法的違い

 文法、というよりは語頭・語尾変化がほとんどなのですが、以下でみていきましょう。

男性 女性 分類
〜だよな 〜だよね 終助詞
〜だぜ 〜だよ 終助詞
〜だろ 〜でしょう 終助詞
ぶん〜(ex: ぶんなぐる) なぐる 修飾
くそ〜(ex: くそやばい) とても・かなり・めっちゃ 修飾
〜しろ、〜やれ 〜してね、〜してください 命令形

「ぶん〜」や「くそ〜」といった程度表現は、あまり良いイメージを持ちません。これも男女優位社会がもたらした変種の1つではないでしょうか。トラッドギルの調査からもわかる通り、社会階層が低ければ低いほど、言語変種の割合が高くなり、かつ横柄な言葉が多くなっていく、という特徴とも一致しますね。

参考記事: 性差・階層別で比較してみるイングランド・ノリッチ地方における地域語の特徴からみえるもの - ことばの世界

単語的違い

 いわゆる男言葉・女言葉ってやつですね。たくさんあるので、よく使うものだけをピックアップ。

男性 女性
おれ・お前・おやじ・はら わたし・あなた・お父さん・おなか

発音的違い

 続きまして発音をフォーカスを当ててみます。

男性
  • [ai] が [ee] になる
    「やばい -> やべえ」「こわい -> こええ」「かたい -> かてえ」
  • [oi] が [ee] になる
    「すごい -> すげえ」「おもしろい -> おもしれえ」
女性
  • 子音が落ちやすい
    • 撥音化・・・「わからない -> わかんない」
    • 促音化・・・「あたたかい -> あったかい」
  • 音節の脱落:「〜するところ -> 〜するとこ」

これはあくまで傾向としてある、ということでして、現代では男性が女性特有だった発音の特徴を持っている場合も多いです。そのまた逆も然り。

ユニセックス化する現代

 性差による文法・単語・発音的違いをざっくりとみてきましたが、この性差の違いそのものが問題ではないか、という提起があったりもします。「男女間の格差」を軸にした問題提起ですね。その流れに沿ってなのかどうかは判別しがたいですが、現代においては言葉のユニセックス化が進んでいる部分もあります。例えば、女性が自分のことを「おれ」と言ったり、男性が「〜だわよね」なんて語尾にしたりする現象ですね。特に若い人に多いように思います。単純にLGBT界隈の話にも聞こえますが、日常のあらゆるシーンでこのユニセックス化が起きています。部活動をしている場合、特に耳にすることが多いと思うのですが、「〜ですね」の部分を「〜っすね」といったり。これ、男性がよく使う言葉のように思えますが、今は女性でも使いますよね。漫画などでも出てきます。
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なので、これまで男性言葉・女性言葉として分離できたものが、これからは男女兼用で使われていくことになるのでしょう。それが良いか、悪いかは置いといて、言葉の運用の経緯というのは面白いところが多いですね。

他の人の論文とか資料

日本語のように性差が目立つ言語は少ない

現代の若者会話における文末表現の男女差

日本語の特色

言語とジェンダー - 日英語に現れる性差 -