ことばの世界

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談話分析におけるテクストとコンテクスト

談話分析をする際に有効なツールとして、テクストとコンテクストがある。談話分析では実際の話された会話などをテクストとコンテクストというスタイルで保存し、分析を進めていくことが多い。以下ではその基礎となるテクストとは何か、コンテクストとは何か、テクストとコンテクストの関係性についてまとめたいと思う。

テクストとは

テクストを構成する3つの要素を押さえよう。

  1. 言語行動の記録・資料
    実際に行なわれたコミュニケーション行動内の言葉の記録である。取り扱うコミュニケーションの媒体は書き言葉の場合もあれば、話し言葉の場合もある。話し言葉の場合は記録しないといけないので録音が必要になる。

  2. まとまりのある言語表現
    ex-1:

    John went to the dentist yesterday. She gave him a shot and he didn't feel a thing. It wasn't so bad after all. <

    ex-2:

    John went to the dentist yesterday. She gave the passenger a ticket and didn't say a word. It wasn't so bad after all. <

    テクストはまとまりのある言語表現でなければならない。ex-1では意味が通るが、ex-2では意味が取れない。 まとまりが有るかどうかの判断は  

    • 同じ主題で貫かれているかどうか(unity)
    • 文と文の間に文法上・五以上の結びつきがあるかどうか(cohesion:結束性)
  3. テクストとコンテクスト
    テクストとコンテクスト両方が相互作用することによって談話が成立する、ということが言える。なのでテクストのみでは談話は成立したことにならない。またテクストは書かれた言葉や話された言葉そのものであるため、その中に隠れているであろう隠喩や文脈から読み取れる別の意味を含まない。これら隠喩や文脈上の別の意味をコンテクストとよぶ。  

コンテクストとは

上記で述べたとおり、書かれた・話された文章そのものを扱うテクストとは別にその文章から別の意味や文脈を捉えるのがコンテクストだ。コンテクストには言語的文脈と非言語的文脈が存在する。

  1. 言語的文脈
    言語的文脈とはことばとことばの関係のことを指す。さらに言語的文脈は2つに分離することができる。後方照応と前方照応だ。
    (1) 後方照応

    ねぇ、聞いて聞いて。こんな話ってある。引っ越しの前の日になって、家主が「入居お断り」って言ってきたの。 <

    (2) 前方照応

    ねぇ、聞いて聞いて。引っ越しの前の日になって、家主が「入居お断り」って言ってきたの。こんな話ってある。 <

    (1)では「こんな話」が後方に続く文を指している。「こんな話が」を使って次文への文脈指示が行なわれている。これを後方照応と呼ぶ。一方で (2)では「こんな」の言語的文脈は変化し、この語の先攻分への文脈指示が行なわれている。これを前方照応と呼ぶ。

  2. 非言語的文脈
    テクストそのもの以外の様々な要素を指す。どんな媒体を使っているのか?コミュニケーションの仕方はどんな?やりとりされている内容は?目的 は?状況は?この談話の参加者は誰?参加者同士の関係性はどうなっている??といったテクストそのものから読み取れない隠れた要素を意味する。

テクストとコンテクストの関係性

談話におけるインターアクション(相互行為)を強調する学者はテクストとコンテクストが相互作用して談話が成立すると考えている。このことを公式化すると

テクスト+コンテクスト=談話

となる。よって

テクスト = 談話 - コンテクスト

とも言える。  

ディスコース―談話の織りなす世界

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