ダイグロシア[diglossia]とは
ダイグロシアとは日本語に訳すると「二言語変種使い分け」となる。 社会によっては二つの明らかに異なる言語が状況や場面に応じて使い分けられており、同時に存在する場合がある。 例えばシンガポールでは大学では英語が使い、家庭では北京語を使う人もいる。この人にとって、日常で複数の言語を使うことは当たり前の状態であり、ダイグロシアとはこのように複数の言語がちゃんと場面・状況によって使い分けられており、言語間の競合が起きていない状態を指す。 よってダイグロシアの特徴は主に2点ある。まず一つ目に言語の安定性がある。次に社会階層化現象である。
言語の安定性
場面や状況に応じて使う言語を選択して言語を使っていくので、言語自体が他言語と干渉しあって衰退する、といった状況は起きにくい。同じさきほどのシンガポールの例でいうと、大学内では英語を使うのが普通であり、各々が「ディスカッションは北京語でやります」などと決められていない限り、北京語や福建語を使う、といったカオスな状況は起きにくい。
言語使用者の社会階層化
ダイグロシアの状況下でよくみられる現象は言語の社会階層化である。 公共・オフィシャルな場で使われる言語を威厳がある言語(High variety)、それ以外のドメスティックな言語を威厳がない言語(Low variety)として上下関係を連想させるような認識のされ方が存在するのである。 例えば、イギリスではReceived Prononciation(RP)がHigh variety, 東ロンドンの労働者階級の人々が使う言語であるコックニーをLow varietyと認識されていたりする。
+α:ポリグロッシアについて
三つ以上の言語変種が併存して使われており、互いに干渉・競合していない状況をポリグロッシア(polyglossia)とよぶ。シンガポールなどがこれに当てはまる。
+α:ドメインについて
ダイグロシアに関して、フィッシュマンが1971年に提唱した考え方で、どの言語が使われるかという選択は場面によってある程度予測できるというものである。 言語は使われる領域(ドメイン)が存在し、その中では1つの言語が使われる、という考え方だ。
主なドメインは
- 家庭
- 友人関係
- 宗教
- 教育
- 雇用関係
の5つが挙げられている。 しかし、必ずしもひとつの場面で一つの言語しか使われないかというとそうではないことが観察できている。例えばパラグアイでは大学の教師はスペイン語で授業を行なうが、ディスカッションを促す際に話慣れたワラニー語にコードスイッチングする場合が存在する。この事例を東は2009年に唱え、ドメインの限界を指摘した。