ことばの世界

言語学を勉強してます

隣接ペアとは何か

隣接ペアとは、対になった2つのターンから構成されるもので、発話のやりとりの分析の最小単位である。 例えば

Aさん:こんにちは。
Bさん:やあ、こんにちは。

このようなやりとりを隣接ペアと呼ぶ。 会話分析(Conversation Analysis)の分野では、Sacksらが先駆けとなり、多くの自然会話が分析されてきた。その結果として、いくつかのパターンを見いだすことができた。 Levinson(1983)は隣接ペアのパターンを以下のように区分した。

  • 問い → 返答
  • 挨拶 → 挨拶
  • 招待・申し出 → 受諾・拒否
  • 陳謝 → 軽減語
  • 不服 → 謝罪
  • 文句・不平 → 否定・詫び
  • 要請 → 許可
  • 情報の要請 → 情報の提供

隣接ペアの定義と特徴

隣接ペアを構成する要素は以下の3つとなっている。

  1. 隣接し、
  2. 異なった話者により発せられ、
  3. 第1部分と第2部分という順序があり、
  4. 型にはまっていて、第1部分が決まった2部分を求める

また4. において、第2部分は『招待 → 受諾』といったプラス(preferred)の応答と、『招待 → 拒否』といったマイナスの応答とがある。後者のほうは、断る理由などを述べることが多いので、前者よりもより複雑な応答になる傾向にある。

また前置き連鎖(pre-sequences)という特徴がある。これは別のことを目的としたときに、どう会話を切り出していくか、といったパターンのことである。例えば、『招待』に先立って、相手の都合を尋ねる連鎖『問い → 返答』(pre-invitations)はその一例である。

Aさん:今日ひま?
Bさん:そうだね。やることないし、暇だ。
Aさん:一緒に海に遊びに行かない?

Aさんの本当の目的はBさんを海に誘うことだけども、突然誘うのをためらい、事前にBさんの都合を聞くことから始めた。このような隣接ペアを前置き連鎖とよぶ。

第1部分と第2部分の関係性

第1部分に対して、第2部分は多くの選択肢が存在する。例えば

Aさん:今何時?

という『問い』に対して、『返答』は

- 9時だよ
- わからない
- 時計みたらわかるよ
- サンフランシスコは23時だよ
- 何時だと思う?

など、あらゆる『返答』が可能だ。

また、第1部分が求めているもの(意図)に対して、意図的に違った意図の返答をすることも可能であるとTsui(1991)は述べた。

母:とっても部屋散らかっているじゃないの!(片付けてくれ、という『命令』が隠された『問い』が意図になっている)
子供:そうだね。(『返答』だが、『把握』を込めたものであり、『命令』に答えたわけではない)

以上が隣接ペアの基本的な概念でした。